今回はミステリーが続きました。どれも面白かったです。
でも、夏川草介さんの「本を守ろうとする猫の話」に一番衝撃を受けました。ただ猫とのほのぼのとした話と思っていて、こういう内容だと思いませんでした。読んでよかった。
ネタバレあります。
225.ブラックサマーの殺人 M.W.クレイヴン
【ワシントン・ポーは何年も前に手掛けた事件のことで突然呼び出される。
6年前に起こったエリザベス・キートン殺害事件。遺体は発見されなかったが、ポーがサイコパスと睨んだ被害者の父親=カリスマシェフのジャレド・キートンが犯人として捕まり現在服役中だ。
しかし今になって殺されたはずのキートンの娘が栄養失調状態で警察官の前に現れた。その後のDNA鑑定でその娘はエリザベス本人に間違いないとわかった。
冤罪でジャレドが無罪放免になるのは時間の問題。それでもポーの考えは揺るがない。捜査のやり直しを急ぐことに。
そんな中、獄中のジャレドからポーへ面会要望が出て・・】
「ワシントン・ポー」シリーズ第二弾です。
面白すぎました。前回「ストーンサークルの殺人」も夢中で読み終えましたが、今回もページを捲る手が止まりませんでした。
かなりの長編。スピーディな展開ですが読みやすく、ストーリーが頭にすんなり入ってきて没頭出来ます。
今回の結論は予想出来るのですが、どうやって?という謎がつきまといます。捜査も難航しますが、それでも少しずつこじ開けて真実に辿り着く過程がとても面白いです。
ただDNA鑑定については都合良すぎる気がしました。それでも最後はスッキリしますし、大満足でした。
ミステリーとしての読み応えはもちろんですが、登場人物のキャラ設定が秀逸です。
ポーは勘も鋭く経験豊富で行動力もあり優秀な刑事ですが、茶目っ気もありとても魅力的です。今回は相棒のブラッドショーの成長も見られました。
ポーの愛犬がエドガー・・名前の付け方も洒落てる。著者も遊び心のある人なのではと想像しています。
226.一次元の挿し木 松下龍之介
【ヒマラヤ山中にある氷河湖・ループクンド湖にはざっと800人の白骨遺体がある。その湖にある骨を持ち去った人間は呪われるという言い伝えがあった。
大学院で岩見沢教授の研究室に在籍し遺伝学を学んでいる七瀬悠は、教授が24年前に取り上げたループクンド湖の古人骨のDNA鑑定を頼まれる。
するとあり得ないことに100%一致する登録データが見つかった。それは4年前から行方不明になっている悠の妹のものと一致していた。
しかし検査の結果その骨は間違いなく200年前の物だった。なぜ?!困惑した悠はこの謎を解くべく岩見沢教授の家に向かう。そして教授の遺体を発見する】
まずループクンド湖が実在することに驚きました。
最初の出だしから衝撃的であっという間に引き込まれました。ストーリーには新しさを感じましたし、よく考えられていて面白かったです。
遺伝子学となると難しそうですが、わかりやすく書いてくれているので興味を持って読むことも出来ました。読み進めてわかるのですが、題名も的を得ていて素晴らしく、唸ってしまいました。
一昔前のミステリーとは違うなぁという印象、ミステリーとしての物語の核が新鮮です。少しSF的でもありました。
でも・・面白いストーリーでしたが、登場人物に魅力を感じられなかった。
そしてあれだけ人が死ぬのに緊迫感があまり無い上に、スピードや盛り上がりを感じられたのは終盤の牛尾との場面だけで、少しサラリとし過ぎていて物足りなさを感じました。
さらに最後は悠の気持ちの変化が腑に落ちません。妙にあっけなくキレイ過ぎる結末でミステリー感が薄れてしまったのも残念。

227.リバー 奥田英朗
【群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で女性の遺体が相次いで発見された。
10年前の未解決事件と手口が似ており、時を経てまたあの時の殺人鬼が動き出したのではと不安が広がる。
なんとしても犯人を逮捕しなければならない、同じ失敗は繰り返せない、群馬と栃木の警察は共同で捜査を進める】
まず本の分厚さに怯みました。辞典かと思うほどの厚みと重さ。物理的に読みにくかったです。
割と早い段階で怪しい人物が3人浮上して、並行して3人の捜査が進んでいきます。こういう展開も珍しい気がしました。
捜査の中で新事実が出て来るたびに段々と犯人に近づく過程は引き込まれましたし、刑事たちの動きが細かく描写されていて臨場感があり面白く読みました。
警察の捜査だけでなく、10年前の被害者の父親や元刑事の執念、容疑者の周りの人たちの心理なども描いていて、犯人を追うというだけではない人間ドラマのような幅や深さも感じました。
ただ最後は割とあっけなく中途半端に終わった感があり、少し拍子抜けでした。
228.本を守ろうとする猫の話 夏川草介
【引きこもり高校生の夏木林太郎は幼い頃から古書店を営む祖父と二人で暮らしていた。林太郎にとって祖父の作りあげた「夏木書店」という空間は安息の場所だった。
しかし祖父が突然に亡くなると叔母に引き取られることとなり引っ越しを余儀なくされる。
そんな中、林太郎の前に人間の言葉を話すトラネコが現れ唐突に言う。「閉じ込められた本を助け出すため力を貸せ」】
スゴイもの読んじゃったなという感じ。読み返したくなる本でした。まだの方は是非!
夏川草介さんといえば医療をテーマとした小説が人気ですが、こういうことを考えている人なんだと改めてその本に対する考えの深さや広さ、人間力の高さを感じました。
「本を愛する」「本を読む意味」を問う内容ですが、一つ一つに頷きながらも耳が痛くなる場面もありました。自分はどうだろう?ちゃんと本と向き合えているか・・。
ハッとする教えがたくさんありました。いつの間にか付箋だらけになっちゃう。
「本を読んで難しいと感じたなら、それは新しいことが書いてあるから。難しい本に出会ったらチャンスだよ」
なんてポジティブな・・今まで理解に苦しむ本はポイってしてたけど、チャンスを捨てていたかも。なんとか読み解こうとする気持ちも大切なのかも。
本に対しての考え方だけでなく、引きこもりだった林太郎が顔を上げて前に歩み出す成長の物語でもあります。こうなったら良いのになぁと思っていた通りの結末でスッキリしたし、読後感は爽やかでした。
最後の著者による「解説にかえてー猫が教えてくれたことー」も本当に素晴らしかったです。
うまく言えませんが、とにかくガツンとやられました。本を読む意欲を更に奮い立たせてくれました。ハードル高いと思っていた本も読んでみよう・・かな。
最後まで読んでくださってありがとうございます。